研究概要 |
本研究は, 短期的には, アメリカ憲法学を素材としつつ, 「私人間における人権保障」についての再検討を行うことを, 長期的には, 「規制と給付の二分論」を日本の人権総論に組み込んだ, 「現代積極国家における人権総論」の再構築を行うことを, 目的としている。 アメリカの判例における「規制と給付の二分論」の一つの考え方として, 給付を行う政府を「私人」と同様に扱うことで, 憲法が保障する権利による制限を緩めようとする考え方がある。このような考え方を接続点とすることで, 「私人間における人権保障」をめぐる問題を, 「規制と給付の二分論」の問題に接続させていくことが可能になる。そこで, 研究初年度にあたる本年度は, まず, これまで研究代表者が研究してきた「規制と給付の二分論」の問題と, 「私人間における人権保障」をめぐる問題との関係を研究していくことで, 本研究の理論的な視角を確立することを目指した。具体的には, 「パブリック・フォーラム」と「違憲な条件の法理」についてのアメリカの判例に関する資料を収集し, その資料に, 「私人間における人権保障」という問題次元を見据えつつ, 検討を加えていくという作業に従事した。その結果, 「私人間における人権保障」についての再検討を行うのに有益な知見を得ることができた。また, 研究の過程で, 「規制と給付の二分論」に関する研究もさらに深めていく必要があることが判明したので, 「規制と給付の二分論」に関する研究も同時に行った(以上の研究成果の一部として, 「違憲な条件の法理の展開(一)」(法学73巻4号)と, 「パブリック・フォーラム」 (駒村 = 鈴木編『表現の自由1』 (尚学社) 所収) がある)。
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