研究概要 |
本研究は,短期的には,アメリカ憲法学を素材としつつ,「私人間における人権保障」についての再検討を行うことを,長期的には,「規制と給付の二分論」を日本の人権総論に組み込んだ,「現代積極国家における人権総論」の再構築を行うことを,目的としている。 本年度は,「規制と給付の二分論」が克服されていく過程に関する研究として,前年度に引き続き,「パブリック・フォーラム」論についての研究を行い,「私人間における人権保障」に関する研究として,Amtrak(全米鉄道旅客公社)が憲法上の権利の制約に服するか否かが問われた1995年のLebron判決に関する研究を中心に行った。前者の研究については,これまでの本研究の関心を引き継ぎつつ,政府とパブリック・フォーラムとの関係について焦点を合わせて研究した。その研究成果として,「表現する場を提供する国家」(『ジュリスト』1422号〔2011年〕)がある。後者の研究では,いわゆる「ステイト・アクション」に関する研究を行ったが,同時に,前者の研究と後者の研究との接合を企図して,「パブリック・フォーラム」論を主たる素材としつつ,公と私との境界線上の問題に焦点を合わせた研究も行った。この研究に関係する成果として,「『政府の言論の法理』と『パブリック・フォーラムの法理』との関係についての覚書」(『季刊企業と法創造』27号〔2011年〕)がある。
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