研究概要 |
本研究は,短期的には,アメリカ憲法学を素材としつつ,「私人間における人権保障」についての再検討を行うことを,長期的には,「規制と給付の二分論」を日本の人権総論に組み込んだ,「現代積極国家における人権総論」の再構築を行うことを,それぞれ目的としている。本年度は最終年度なので,これまでの研究を取りまとめる観点から,(1)「規制と給付の二分論」に関する研究,(2)「私人間における人権保障」に関する研究,(3)(1)と(2)の研究を日本におけるこれまでの研究に架橋するための研究を行った。(1)に関しては,まず,平成21年度及び平成22年度に行った「伝統的パブリック・フォーラム」に関する研究成果にもとづき,「規制と給付の二分論」と密接に結びついていた「権利と特権の二分論」の研究を行った。また,研究代表者は,合衆国最高裁判所の判例において,「規制と給付の二分論」が克服されていく際に重要な役割を担った「違憲な条件の法理」及び「パブリック・フォーラム」論の研究を行ってきたが,本年度は,本研究のこれまでの成果にもとづいて,「パブリソク・フォーラム」論及び「違憲な条件の法理」について再検討した。(2)に関しては,アメリカ合衆国における「ステイト・アクションの法理」について検討した。(3)に関しては,日本の従来の議論及び判例を,本研究の視点から捉えなおす研究を行った。本研究の直接の研究成果といえるものではないが,憲法判例研究会編『判例プラクティス憲法』(信山社,2012年)において研究代表者が執筆した108~133頁のうち112~121頁及び123~133頁は,(3)に関する研究成果が反映されている。
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