研究概要 |
今年度は, 憲法18条が前提とする「苦痛」概念を中心に「人身の自由」の基礎を再検討する研究を行った。そのために, 国内外の諸文献を網羅的に収集し, その分析にあたることができた。当初は, 英米法の研究にも着手する予定であったが, 体調をやや崩し, もっぱら日独の刑事法と基本権に関する文献の検討にとどまった。英米圏の論考にも来年度以降順に研究範囲を広げる予定である。本務校で入手が難しい資料は, 夏季・冬季休暇を利用して主に東京大学および北海道大学に出張し, その入手に努めた。2008年7月19日に開催の北陸公法判例研究会において, 「意に反する苦役禁止の現代的意義-裁判員制度を素材に」と題して, 研究成果の一端を披露する機会を得た。同年9月8・9日に開催の東京法哲学研究会・法理学研究会共催の合同合宿(御殿場)において, 吉良貴之「法と時間の秩序」に対してコメントを行った。さらに同年10月11・12日に開催された日本公法学会(学習院大学)に参加し, 研究課題に関して知見を深めた。以上の研究成果を受けて, 日本国憲法の「人身の自由」に関する基礎的考察に深まりを見せたので, すでに提出済みの拙稿「危機に立つ人身の自由」畑安次・船越耿一編『危機に立つ日本国憲法』(ミネルヴァ書房、2009年発刊予定)を全面的に書き改めた。また, 「住基ネットと憲法13条」と題して, 住基ネット上の本人確認情報の収集・管理等を合憲とした最高裁判決を分析した論考を平成20年度重要判例解説(有斐閣)に寄せた(校正中)。
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