本研究の目的は、行政情報の公開や提供を事実上の権力作用として捉えてみた場合において、どのような主体について、どのような情報内容の公開や提供が進められており、また公開が課題となっているのかを分析することである。今年度は、情報公開法制(情報提供を含む)の適用対象法人が、この10年ほどの問にどこまで拡大しており、またどのような法人についてはその適用対象となっていないのかを中心として、分析した。その成果の一部は、「情報公開法制の適用対象の拡大について」(名古屋大学法政論集225号掲載)と題する研究論文として公開されている。 今年度に実施した研究の意義は以下の通りである。情報公開法は、一方において国民住民の知る権利の実現や国民主権原理の貫徹を目的とするものであるか、他方では、情報公開義務を課せられないという意味での国民の自律を保障するものでなければならない。国や地方公共団体以外の主体に対する情報公開法制の適用の是非は、それぞれのバランスをどのように保つのかが考慮されることによって、判断されるものである。このようか観点から、いくつかの主体に即して、情報公開法制の適用の是非、どのよりな内容の情報であるのかの区分、開示請求と開示義務という法的性質をもつことの適否、を論じた。 今年度に実施した研究は、次のような重要性をもつものである。道路公団の廃止のように、従来情報公開法制が適用されていた法人が廃止されたのちに新たに設立された法人に対して、国民が情報公開請求権を行使できない、といった問題が実際に起きている。このような場合において国民の知る権利を実現すると同時に法人の自律を保障できるような情報公開制度を検討する必要がある。そのような最新の課題についての取り組みであるという点で、本研究は重要性を有している。
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