|
1.結社の自由の実効的保障の観点から、今般の公益法人制度改革を検討することが本研究課題の目的であるが、本年度は、次の2点についての検討を行った。
2.第1は、非営利法人・公益法人の活動を支える制度的基盤についてである。これについては、フランスで2008年に導入された寄附基金法人制度(fonds de dotation)の概要とその意義を検討した。これは、従来の一般非営利社団(association)と財団(fondation)からなる非営利法人制度に追加される新たな法人類型であり、両者の利点を取り込んだ形で非営利団体の財政支援を促進する点で、理論的・実務的に重要な意義を有する。論文末尾には、「フランスの非営利法人制度比較表」を作成・掲載しており、フランス非営利法人制度の概要とその比較を容易に行えるようにした。第2は、非営利法人法の各論的研究である。具体的には、政党に対する公的助成の問題を取り上げて、当該制度が結社の自由の観点からどのように評価されるべきかについて、いくつかの問題提起を行った。この点、政党助成制度は、私的結社としての政党の活動の自由を促進する側面がある一方で、それに伴う様々な義務が結社の自由を侵害する側面を含むことが確認された。さらに、厳格な交付要件は、政党の新規参入を困難にすることから、政党助成を受けられない政党の政治活動を侵害する恐れがあり、それゆえ結社の自由との関係で問題があることを指摘した。
3.今年度は最終年度であったが、急きょ在外研究に行くことが決まったため、残念ながら全体の論点をまとめるという段階には至らなかった。今後は個別の論点を結社の自由の体系の中に位置づける作業を行いたい。
|
