研究概要 |
当初の予定は, DuvergerやCapitantの議論の根拠を遡っていくことを研究内容としていた。しかし, ある程度予測していたものの, 彼らの議論は根拠の明示に乏しく, この点の検討にかなり苦労した。そこで明示されていないところを探る必要が出てきた。今年度はまず, 第三共和政期の議論を振り返ってみて, それとの連続と断絶を検討することにした. すなわち, 国民内閣制論の特質の1つとして, 法の領域と政治の領域を分けるだけでなく, 政治の中心を一箇所 (この場合は内閣) に定める発想がある。しかし, 後者の点についても, 制度を作る作用について中心を見出すことができるのか, 少なくとも第三共和政期の憲法学の発想はそういう中心を設けないものだったのではないか。 こうした疑問を手がかりに第三共和政期の憲法学を読み直すことにした。 その結果, 新しい視角が得られた。それは, 制度と自由の関係には制度と親和的な自由と制度からの自由があり, そのような制度をどう設定するかを政治の問題として分析するというアプローチである (法の領域と截然と区別するかは別として) 。こうすることで国民内閣制論的な発想を, 憲法上の権利論についての理論構成との関係を意識しながら考えることができるような予感がしてきたのである。こうした問題への接近の仕方を見出したきっかけとたったのが, 業績に記した論文の執筆作業であった。 この論文を書く上では, 「研究計画調書」に記したとおり, 字数をかなり絞ることによって, 文献学的な学位論文の研究スタイルを維持しつつ, 表記方法の面でもう少し読み手に対して苦痛を与えないものを執筆するように心がけた。もっとも, 内容的には執筆後さらに検討が進んだ部分もあるので, まさに一里塚という感想を持っている. なお, 「研究計画調書」にすでに記した学位論文の公表は実質的には, 今年度に行われた。この公表段階での手直しでも上記の問題意識を少しずつ反映するように心がけた.
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