研究概要 |
これまでの総括論文の執筆(「研究実施計画」(1))ついてはドラフトをあらかた書いたが,まだ公表に至っていない。その執筆過程で,立法権や執行権を行使する上での「目的」という問題の所在に気づいた。そのため,この論点について探究を行ったところ,想定以上に豊かな成果が得られた。すなわち,この「目的」論は,フランスでは権利濫用論(民法学),権限濫用論(行政法学)と共通の基盤の上にあり,コモンローへの傾斜というコンテクストもそれにかかわり,しかも,包摂(当てはめ)を基軸とした古典的なフランス法学が衡量を中心にした新しいものへと変容していく中で,前面に出てきたことがわかったからである。このことを論文にまとめて,上智大学法学部の紀要に公表した。 フランス語での発信(同(2))については,この論文の内容をフランス語に翻訳して,平成22年12月にストラスブール大学オリヴィエ・ジュアンジャン教授に提出した。ただし,別のフランス人研究者から電子メールで示唆を受けたところも踏まえて考えてみた結果,上記論文執筆時に気になっていた同時代のフランス思想(「変化」や「進化」に関心を向けるベルクソン主義)との関係について詰めて考えることが必要ではないかと思うに至った。そう思ってフランスの古典的著作を見直してみると,この視点は本研究が注目する時代の文献を理解する上で不可欠であることがわかった。平成23年度にストラスブールにて長めの在外研究を行う機会を所属大学からいただけたので,その際にはこうしたさらに広い視野の下でアドバイスを受けようと考えているのが現在の状況である。
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