研究概要 |
高橋和之教授が唱えて学界の注目を浴びた国民内閣制論は,第三共和政期から第五共和政期のフランスの憲法学を参照して組み立てられている。これに対する批判はさまざまになされてきたが,内在的な批判,つまり,高橋教授が典拠として示した議論に即した批判は必ずしも多くなかった。そこで,本研究は,この欠を埋めるべく,フランス・ドイツの議論を歴史的に検討しようとすることを目的としている。その研究の結果,フランス第三共和政期の議論の特徴として,同時代の社会学や哲学の進展を受けて,動態的な問題に関心を向けながら,伝統的な自然法論の枠組みが維持されたことが明らかにされた。国民内閣制論も,この特徴を受け継いでいるように思われ,それをいかに評価するかが問題であるというのが,研究終了時の結論である。
|