自己決定権・プライバシーの観念や医科学研究の規制のあり方に関する文献およびインターネット等から情報収集し、パソコンで整理・分析して、生命倫理と法の諸問題の法的検討を進めた。また、東京大学グローバルCOEプログラム「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」主催・第2回原子力社会論・公開ワークショップ「市民参加と高度科学技術・高レベル放射性廃棄物処分の問題を題材に」、東京大学グローバルCOEプログラム「次世代型生命・医療倫理の教育研究拠点創成」主催・加藤尚武氏講演会「合意形成と生命倫理-政策に臨む倫理」、早稲田大学GCOE《企業法制と法創造》総合研究所主催・国際シンポジウム「ヒト由来物質をめぐる法的課題」、立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点・公開シンポジウム「研究の自由と倫理を考える-生命科学をめぐって」等に参加して、情報の収集・交換を行い、検討を進めた。その結果、次のような知見が得られた。 ・妊娠中絶に関する「自己決定権」の観念は、通常の「自己決定権」とは異なり、「自己」の領域の自律性というより、「自己」の領域そのものを決定する性格がある。それは、日本国憲法の「個人の尊重」も前提としていると考えることができる。 ・存在を保障されるべき者がいることを前提とし公私区分の観念をもつ社会において、<誰が存在を保障されるべき者であるのか>について誰がどのように設定する権能をもつのか、という問題がある。 以上のような知見は論文にまとめた(次年度に公刊される予定である)。 また、医科学研究を「公序」の観点から規制しようとする見解は、日本国憲法の「個人の尊重」の要請と整合するのかという問題、および、法律による規制と行政機関の役割、専門家集団の自律性の関係について憲法上どのように整理しうるのかという問題について、考察を進めている。
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