国際コントロール理論の実証分析を行う前提として、国際コントロール概念の整理を行うために、先例研究の分析、および19世紀以来の国際組織による国際法の履行確保の制度化について、文献収集・整理、文献解題を行った。文献収集については、インターネットにより入手可能なデータも含め、主要なものはかなりのものが集められた。今後は、それらのさらに詳細な分析を行うことになる。 また、当初予定していた国際原子力機関への出張は、近時の国際関係から、訪問しての調査が難しくなり、EU(ベルギー)への出張に変更することとなった。そこでは、欧州委員会のLegal Officerとの意見交換、資料蒐集等を行った。具体的には、EUの締約国とIAEA(あるいはその他の国際組織)との個別の関係と、諸協定に対する見解について議論を行った。また、根本的な問題として、欧州委員会における原子力および核不拡散問題の重要性が指摘された。 他分野との比較研究に関しては、海洋生物遺伝資源の国際管理についての分析を行い、環境法政策学会にて研究報告を行った。国家管轄権の及ばない公海や深海底の生物遺伝資源に関する権限あるいは管理につき、国際組織による国際管理と、従来の伝統的な国際法原理による管轄権の交錯という2つの立場の対立に加え、国際環境問題ならではの「予防的アプローチ」を取り込んだ新しい立場も見られ、分析対象としては極めて興味深い事例であった。これについては、近く活字にすることを予定している。
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