第一に、前年度までに収集した19世紀以来の国際組織による国際法の履行確保の制度化についての文献の解題を行った。さらに、近年問題になっているイラン、北朝鮮等の核施設への査察問題に関する資料蒐集を行った。 第二に、第64回国連総会、第二委員会(持続可能な開発)、第六委員会(国際法委員会)を傍聴した。第二委員会においては、気候変動やその他の環境問題への対策について、主として発展途上国からの意見が活発に出されていた。他方、先進諸国は、出席国も少なく、対照的であった。第六委員会は、今夏のジュネーヴにおける国際法委員会での議論の報告であったが、共有天然資源についての議論が行われた。共有天然資源の定義、境界画定問題との関連で二国間関係での解決がふさわしいと思われる石油問題等、国際法委員会での議論の限界も見えるものであった。 第三に、他分野との比較研究に関しては、海洋生物遺伝資源の国際管理についての昨年までの研究をアップデートし、中国で開催された日中環境法学術論壇にて、「海洋生物遺伝資源に関する国家管轄権」と題した研究報告を行った。これについては、近く出版される『環境と法-国際法と諸外国法制の論点-』(三和書籍)に収録される(入稿済み)。また、海底の鉱物資源管理に関する国際制度の研究として、"Current Issues in Seafloor Massive Sulfide Mining Development"と題する論文(福島朋彦東京大学准教授との共著)をInternational Society of Offshore and Polar Engineersに投稿し、採択された。2010年6月に学会報告の予定である。
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