本研究の目的は、非国際的武力紛争(NIAC)に適用される国際人道法の規則が最近著しい発展をみせているところ、そのような発展が国際的武力紛争(IAC)とNIACの構造的な相違をどの程度反映しているのか、反映していないとすればそこに決定的な問題がないのか、といったことを明らかにし、それによりNIACに適用される国際人道法のあり方を再構成しようとするものである。 本年度は、昨年度に引き続いて文民の定義および戦闘に参加する文民の地位に関する研究を行った。昨年度に国際法学会において報告した内容を発展させつつ、赤十字国際委員会が長年の議論の成果を公表した「文民の戦闘への直接参加に関する解釈指針」をふまえた研究を行い、「国際法外交雑誌」にその成果を公表した。 また、本年度は武力紛争時、特にNIAC時における国際人道法と国際人権法の適用関係にも研究を進めた。問題が近年特異な形で顕在化しているところのいわゆる「テロとの戦い」の文脈において、国際人権法の適用可能性を検討し、その成果を「国際問題」において公表することができた。
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