平成22年度は、前年度に引き続き、1.国内の社会サービス争訟例の収集および分析、2.スウェーデンの「社会サービスにおける選択の自由に関する法律」の制定施行に関する調査を行った。 1.については、前年度に引き続き、公刊裁判例の収集・分析を行った。裁判例の分析・検討の結果は、随時、判例評釈として発表している。 2.については、交付申請書での計画通り、2010年9月にスウェーデン・マルメ市ヒリエ区社会福祉課において「社会サービスにおける選択の自由に関する法律」の施行前後での社会サービスの利用状況の変化について聞き取り調査をしたほか、ルンド大学法学部および社会学部の研究者らとの意見交換を行った。前年度にルンド市にて行った調査結果とは対照的に、マルメ市では社会サービスにおける選択自由制を導入しておらず、従前と同様にコミューンによるサービスの割り当てが行われているということが判明した。また、研究者らからは、選択自由制は大都市向けの施策にすぎず、スウェーデンの国土の大部分を占める小規模コミューンには不向きであるといった、否定的な評価がなされていることも明らかになった。 以上の研究成果は、日本の社会サービスを巡る紛争を総合的に分析・整理するものとして先行業績にはない新規性を有し、今後の社会サービス争訟の解決方法を考える上でも重要性を有する。また、本研究は、高福祉国として注目されるスウェーデンの社会サービスの現状と課題をわが国に伝える点でも、重要な意義を有する。
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