わが国では、介護保険制度の施行後、サービス利用中の事故を巡る争訟が増加している。裁判例からは、要介護状態にある利用者の心身の状況に応じて適切な介護を行い、事故から利用者の安全を守るために適切な対応を取る義務を、サービス提供者は負うといえる。そして、その義務の内容は、家庭内介護において家族が行う注意・監視の程度よりも高く、介護に従事する専門職に一般に期待される水準となっている。他方、スウェーデンにおける社会サービス法を巡る争訟は、サービスの提供責任を負うコミューン(自治体)の決定をめぐる紛争、社会サービス受給権の発生要件を巡る紛争、社会サービスの水準の紛争に分類することができる。同国では2009年に社会サービスにおける選択自由制が導入されており、今後、選択自由制の下でのサービスの水準の維持が新たな論点となると予想される。
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