(1)実定制度としてのドイツ住宅手当の全体像に迫るため、各種資料の入手を精力的におこない、とりわけ立法関連の一次資料(連邦議会に提出される法案及び趣旨・理由説明)を取りそろえることができた。ドイツでもあまり注目されていない論が多数含まれている。その他、社会保障法の体系書・概説書、社会法典第1編(総則)第7条(適切な住宅に要する費用への支援)該当部分とあわせて、目下翻訳中である。 (2)基本的に日本では住宅扶助の単給がおこなわれていないため、法全体の適用が条件となるという意味で、住宅扶助の使い勝手はあまりよくない。しかし住宅手当のような制度を持たない日本では、住宅扶助に頼らざるを得ず、その果たすべき役割は比較的大きい。そこで、住宅への支援という点で密接に関連する、いわゆるホームレスに対する生活保護の運用について、佐藤訴訟-審判決を分析し(社会保障判例百選91)、生活保護法30条の解釈に関して検討を加えた。 (3)ドイツの住宅手当はハルツ改革後生活保護受給者への適用が排除され、逆の意味ハルツ法下での最低生活保障と住宅に対する支援の統合が問題となってきており、その点も踏まえ、日本社会保障法学会にてドイツの最低生活保障制度の動向について報告した。ドイツでもこうした排除が正しかったかどうか、一部ので検証が始まっているようである。具体的には、 (4)3月に訪独し、制度研究者(法学、福祉学)へのインタビューないし意見交換をおこなった。あわせて現地で資料収集をおこなった。そのなかでマックスプランク研究所(ミュンヘン)への紹介を取り付けた。
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