(1) 2009年に大幅改正されたドイツの新住宅手当制度について、これまで各所で入手した諸資料(立法関連の一次資料(連邦議会に提出される法案及び趣旨・理由説明)など)に目を通し、重要なものから翻訳に取りかかった。基本書はいまだドイツでも少ないものの、簡単なコンメンタールが幾つかでてきたので、あわせて比較に附しているところである。 (2) 日本でも雇用と生活保護の隙間に対する認識が浸透し、政権交代前後から、あいだを埋めるための各種制度が矢継ぎ早に打ち出されるようになった。なかでも注目は「住宅手当」である。名称だけを見ると、日本でもついに家賃補助が開始したかのような印象を与えるが、実際は、期限付き・上限付き、要件も比較的厳しく、公的扶助の変種とでもいうべき内容になっており、また窓口での使い勝手もよくなく、生活保護本体との関係も詳らかでない。とはいえ、何らかの端緒になる可能性はあり、関連資料を渉猟中である。 (3) ハルツ改革後、ドイツでは基礎保障および社会扶助受給者への住宅手当適用が排除されてきたが、ドイツでも最低生活保障における住宅問題は再燃の様子を見せており、具体的には、再度住宅手当の支給対象とすべきであるという主張も少ないながら見られはじめた。この点はいまだ生起中の論点であるが、注意を要する問題であり、両者の結節点として意を払っていきたい。 (4) 年度内に2度訪独でき、比較的恵まれた研究環境であった。そのなかで、研究者(法学、福祉学)のみならず裁判官へのインタビューもおこなえた。
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