2点指摘する。一つは、同一労働同一賃金原則は、人権(差別禁止)的な根拠から生じる原則ではないという点である。平等という抽象的な要請ではなく、より具体的な要請がなければこれを法原則として認めるのは難しいであろう。もう一つは、これらの議論では既存の賃金決定システムに対する評価が立場の違いになって現れているということである。イタリアの議論は、全国レベルの労働協約を中心とした賃金決定システムを、前提に、展開されている。この賃金決定システムへの評価がイタリアの議論には大きく影響している。従来の日本の議論では、非典型労働者の賃金決定システム自体の評価を明確に意識した議論はされてこなかったのではなかろうか。
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