今年度も昨年度に引き続き、営業秘密侵害罪の内容を明らかにすることを試みた。日本と同様に不正競争防止法に営業秘密を侵害する罪を置いているドイツにおける議論がわが国の規定の理解に対して大きな示唆を与えると考え、ドイツ不正競争防止法(UWG)17条以下に関する諸文献に多く触れた。 また、韓国は、日本と同様にドイツ刑法学を継受しているという点で共通点があり、我が国よりも早く営業秘密を刑事的保護の対象としている。(韓国でも、企業の持つ秘密情報が不正に侵害される事件が年々増加してきており、平成17年には、営業秘密侵害の罪に係る事件数が29件にのぼったという)。我が国には営業秘密侵害罪が適用された事案が未だ(少なくとも公刊物を見る限りでは)存在しないため、韓国における裁判例にも接した。 韓国法との比較の点では、平成21年8月に韓国・漢陽大学で行われた「第11回関西大学・漢陽大学共同シンポジウム」において、日本の営業秘密侵害罪を紹介する分科会報告を行い、韓国側出席者と情報交換を行った。特に、韓国の不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の営業秘密侵害罪の内容及び平成16年改正の状況、並びに、韓国における営業秘密侵害の被害状況とその取締りの実状について情報を得た。
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