(1) ケース研究 第一に、裁判員裁判が始まればその対象事件となりうるが、裁判員裁判も公判前整理手続も実施されていない従来型のケースについて、記録の収集・検討、手続関係者へのインタビュー調査を行った。第二に、裁判員裁判の対象事件とはならない従来型のケースについて、情報収集・検討を行った。第三に、裁判員裁判が始まればその対象事件となる事件で、かつ公判前整理手続が実施されたケースについて、情報収集・検討を行った。第四に、裁判員裁判の対象事件にはならないが、公判前整理手続が実施されたケースについて、情報収集・検討を行った。第三に、模擬裁判員裁判が実施されたケースについて、情報収集・検討を行った。 研究計画段階においては、これらのケースを比較することによって、手続の相違等により、当事者の主張・立証と裁判所の事実認定との関係について有意のある違いがあるか否かを考察する予定であったが、検討したケース数の少なさ等のため、一定の結論を出すためには次年度の検討を経る必要がある。もっとも、もとより捜査のあり方が根本的には変わっていないことによる、等質性が認められるところがあった。 (2) 理論的研究 要証事実の理論的意義と内容的正当性のある事実認定を確保するための諸条件を明らかにするため、関連する邦文献、英米ならびにドイツの証拠法・手続法の関係資料を収集・分析した。特に英米法における、証拠法と手続的コンテクストとの関係を注目する議論が、本研究にとって参考となった。
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