2009年度は、スペインのオニャティの法社会研究所において開催された法と国際法社会学会において、"Crime Policy for Sex Offenders in Japan-Exclusion or Re-integration? Which Way Are We Going to Take?というテーマで報告し、とくにヨーロッパから参加している聴衆から有益なコメントをもらえたことは今後研究をまとめるうえで指針となった。 また、海外調査は米国ヴァージニア州東メノナイト大学の「修復的司法と平和研究センター」を訪問し、性犯罪等の重大事件における修復的司法の可能性について調査した、また、被害者が受刑者と対面するためのプログラム「Victims Voices Heard」をデラウェア州に訪問し、性犯罪被害者で加害者に対面した経験を持つ女性にインタビューを行った。また、英国調査においては、性犯罪者の居住地情報を子どもを持つ親等の限定した対象に開示するパイロットプロジェクトについて、内務省の担当職員やケンブリッジ警察、リーズ大学、ハル大学、ケンブリッジ大学の研究者、またNPO団体であるNSPCC(児童虐待防止協会)などを訪問し、インタビューを行った。さらに、CoSA(支援と責任のサークル)を訪問し、性犯罪における修復的司法の可能性についても調査を行った。 さらに、国内調査については、保護観察所や更生保護施設を訪問し、性犯罪者に対する社会内処遇の実情について調査した。また、2009年5月より裁判員制度が開始されたことから、性犯罪事件が裁判員裁判で審理されることにより、性犯罪に対する量刑や、ひいては性犯罪対策全般にどのような影響を与えるのかも更なる検討課題として追加された。この点については、性犯罪事件の裁判員裁判を担当した弁護士や、性犯罪被害者支援団体などにインタビューを行う機会を得た。2010年度もこのテーマにまた、性犯罪被害経験者に「裁判員裁判時代の性犯罪被害者支援」というテーマで外部にも公開した研究会を開いた。
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