本研究は、事後的な関与者の罪責をめぐる理論的枠組みを構築するという最終的目標に向けて、その中でも特に、事後的関与者にいかなる罪が成立するかという問題を探究することを目的に、承継的共犯論を徹底的に研究するものである。 本研究の目的を達成するためにはまず、第一に、従前の学説において行われてきた「承継的共犯論」に関する検討(検討課題(1))、第二に、共犯に関する基礎理論として「共犯の処罰根拠論」に関する検討(検討課題(2))、第三に、「刑事事実認定」に関する検討(検討課題(3))、第四に、「犯罪の終了時期」に関する検討(検討課題(4))、という個別的な検討課題についてそれぞれに特化した検討を行う必要がある。そこで本年度は、各検討課題に関する文献資の収集・調査という基礎的作業に努めた。検討課題(1)(2)に関しては現在においてもなお学界における議論の中心領域であるし、検討課題(3)に関しても裁判員制度の開始を契機に近時議論が活発化している。さらに検討課題(4)に関しても近時の最高裁決定を契機に多くの研究成果が発表されているところである。こうした状況から、本年度の各検討課題に関する基礎的検討においては多くの重要な知見を得ることができた。特に検討課題(2)(4)に関する研究成果の一部は、下記の学会発表及びその内容に補筆した雑誌論文に取り入れて発表した.
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