研究概要 |
本年度の研究成果のうち, 主要なものとして, (1)「差止請求権の発生根拠に関する理論的考察-差止請求権の基礎理論序説-(8)」早稲田法学84巻1号81頁〜110頁(2008), (2)「同(9)」早稲田法学83巻4号109頁〜140頁(2008), (3)「差止請求権の発生根拠に関する理論的考察-差止請求権の基礎理論序説-」(博士学位請求論文。2008年11月26日, 早稲田大学に提出。2009年4月22目, 同大学より博士(法学)の学位を授与される。), (4)「競争秩序と差止-課題の整理と展望-」藤岡康宏編『早稲田大学21世紀COE叢書企業社会の変容と法創造3民法理論と企業法制』(日本評論社, 2009)191頁〜214頁, 以上4つの論文を公表した。 これらのうち, まず(1)〜(3)は, 我が国の現行民法典における差止請求権の(実質的・形式的)発生根拠について考察を行うものである。右考察は, 本研究の目的とする「差止請求権の要件・効果の具体的内容の解明作業」にとって, その基礎を成すものとして, 差止請求権の要件の基本的内容が「本来あるべき法状態が現在, その実現を妨げられている(或いは妨げられようとしている)こと」, 及びその効果の基本的内容が「そのように現に破られている(或いは破られようとしている)本来あるべき法状態を維持或いは回復すること」であることを, それぞれ論ずる。 また, (4)は, まさしく本研究の目的の1つであるところの, いわゆる集合的利益(の1つとしての競争利益)を侵害する違法行為(競争秩序違反行為)に対して, 私人の差止請求権がいかなる場合に(=どのような要件の下で)発動されるべきか, かつそのような差止請求権を基礎付けるためにはいかなる理論的課題を克服する必要があるか, との問題-差止請求権の要件論に関わる一具体的問題-について分析するものである。
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