本年度は、前年度に引き続いて、日本法における判例・学説を分析し、日本法における表明・保証責任の位置づけを明らかにした。そのうえで、さらに、日本法では、そもそも表明保証責任を問う前提として、企業買収を行う際に、デューディリジェンス(企業監査)を行うことが取引慣行であるのかがそもそも問題となることを明らかにした。 そして、ドイツ法におけるM&A実務についての判例・文献等について比較法的分析を行い、それによって、ドイツにおいても、日本法と同様に、表明保証責任を問う前提として、デューディリジェンスが取引慣行であるのかという点については、そもそも争いがあるが、デューディリジェンスの不履行自体が重過失を構成しないことについて争いがないことが明らかとなった。以上の成果について、神戸大学民法判例研究会や横浜実務民事法研究会において報告し、研究者・実務家のレビューを経たうえで、それをまとめたものを「企業買収契約における表明・保証違反と重過失免責」として、横浜国際経済法学19巻2号(2010年12月)に公表した。 さらに、表明保証責任と関連して、ドイツ法における性質保証責任についても、派生的な成果として、「売買目的物の性質を保証した場合の売主の責任について」を、横浜国際経済法学19巻3号(2011年3月)に公表した。
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