本年度は、3カ年の継続研究の最終年度にあたることから、前年度までに実施してきた日本における民法・特別法上の契約解消法制の内容の再検討、また、ドイツ・EUにおける民法・消費者法の融合に向けた動きに関して収集した情報の分析を受けて、わが国におけるあるべき民法・消費者法の関係について、多角的な観点から考察を行ってきた。 その結果、本年度は、消費者解消法制のあり方を民法・消費者法・特定商取引法という広い枠組から捉え直したものとして、次頁に掲げた「消費者契約法4条の新たな展開(1)~(3・完)」(国民生活研究50巻2~4号)を公表した。また、紙幅の関係で次頁には掲載できなかったが、同じく契約解消法制のあり方に直接問題提起をするものとして、「消費者契約法4条の『重要事項』の意味」(国民生活研究50巻1号)も公表している。このほか、個別の消費者紛争類型における契約解消法制のあり方を検討するものとして、「宗教と消費者保護-霊感商法を中心に」(愛知大学宗教法制研究所紀要51号)等も執筆した。 とりわけ、最初に掲げた「消費者契約法4条の新たな展開」は、研究代表者が収集しえた限りではあるが、同法制定以後のわが国における裁判例をすべて分析したうえで、同法の契約取消権に関する各条文につき、上記裁判例や学説の動向もふまえながらそのあり方を検証するとともに、新たな立法の方向性を示唆するものである。また、裁判例については、実際の相談現場でのニーズも適用条文ごとに表にまとめて一覧性を確保するよう工夫している。 以上のように、本研究では、理論と実務の架橋を図りつつ、消費者にとって透明度の高くわかりやすい統一的な消費者法制のあるべき姿を提示するという目的を達成したものを考えている。
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