研究課題「保証契約の基礎理論に関する研究 : フランス法との比較を中心に」については、平成20年度中には、主として、以下の2点につき、分析・検討をおこなった。 (1) は、保証人の財産・収入(支払能力)に見合わない場合の保証人の責任制限に関する問題で、フランスにおける近時の立法と司法による保証契約の内容に対するコントロールの一態様に関する。立法は個人の過剰債務(わが国でいう多重債務)問題の一環として行われ、判例は保証契約締結時の当事者の行為態様を問題にする。いずれも、保証契約全体を無効にするものではなく、かつ、当事者の意思の探求に帰せられない契約内容の修正方法として注目される。成果は、「保証人の『過大な責任』-フランス保証法における比例原則-」(法政論集227号)として公表した。 (2) は、受託保証人の事前求償権が、受託事務である保証債務の履行責任が存在する限り、これと別個に消滅せず、消滅時効の進行も開始しないと判示した東京高裁平成19年12月5日判決(判時1989号21頁)の批判的検討に端を発する。保証が用いられる場面の多様化により、保証人の事前求償権の存在理由もまた異なっており、裁判例の示した法理をさらに深める必要があろう。研究会において報告をおこない(2008年12月)、「事前求償権と消滅時効-東京高裁平成19年12月5日判決-」(彦根論叢377号)を執筆し、公表した。
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