種類株式については、多数の検討事項があるが、本研究において特に明確にしたいのは、非公開会社において、1 現状の議決権制限株式がどのような問題を起こしているか、2 種類株式設計時の法的な制約原理をどのように考えるべきか、3 現状の問題を打開するために、定款(付属定款)への記載事項について、実際にどのように解釈すべきか、の三点である。 本年度は、昨年度に引き続き、米国・EUとの比較法的検討を加えるという本研究の二年目として、主に米国における判例の分析を中心とする作業を行った。 本年度の成果として、昨年の日本における既存の株主・種類株主が不当な不利益を被る可能性があることを明確にしたことを踏まえて、米国でも、過去に同種の問題についての幾つかのメルクマールとなる判例があること、そして、それが日本法の改善にも大きな示唆となりうる可能性が認められることを確認できたことが、大きな意義があると考えている。 なお、2については、日本では会社法109条1項により、同じ内容の株式については株式数に応じて平等に取り扱うべきことを規定しているが、米国では、日本における「株主平等の原則」のような明確な制約原理が存在しているわけではない。米国では、実際には、定款・付属定款等を活用することで、多くの問題を克服しているが、米国の付属定款に関連する問題についての十分な資料の収集ができたことで、今年度は、そのとりまとめ及び昨年度に日程の都合上難しかったEUの調査に集中できることとなり、3についての一定の指針を最近特に話題となっている公開会社法制との関連から一つの試案として提言することが可能であると考えている。
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