本研究は、その目的を、銀行の経営悪化・破綻時における監督当局の責任に関する問題を、その対応なり方向性なりが未だ示されていないわが国の現状に求め、1970年代の銀行破綻においてドイツ連邦監督局の監督責任が大きな社会問題となったドイツにおける法的対応とそれをめぐる判例および学説の動向を分析し、わが国においても現実に生起しうるであろう法律上の問題について検討を加えるものである。本研究は、銀行の経営悪化・破綻時におけるドイツの銀行監督当局の責任問題を対象としており、とりわけ1979年のヘルシュタット銀行事件判決および1984年の第3次ドイツ信用制度法(わが国の銀行法に相当)改正に関する研究がその中心となっている。そこで、本研究の初年度にあたる平成20年度においては、提出済みの「科研費補助金交付申請書/研究実施計画」に従って、銀行法および金融法分野に関する多くの文献・資料を所蔵する(社)東京銀行協会/全国銀行協会附属の銀行図書館を積極的に利用するなどして、本研究に関する国内外の文献・資料の収集に努めてきた。 なお、本研究代表者は、昨年7月の四国・金融商事法研究会(平成20年7月12日(土)於香川大学)において、「銀行規制における監督当局の責任」と題する研究報告を行った。同研究報告はもっぱらイギリスにおける銀行監督当局の法的責任を対象とするものにすぎないが、本研究と同様の問題を検討していたこともあり、若干ではあるが、本研究の対象であるドイツ法の現状(具体的には、銀行監督当局の責任が表面化したヘルシュタット銀行の破綻および同銀行事件判決、ドイツにおける預金保険制度の内容、監督当局の責任を免除する旨を定めたドイツ法の規定の各紹介)について報告を行っている。
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