本研究は、銀行の経営悪化・破綻時における監督当局の責任に関する問題を、その対応なり方向性なりが未だ示されていないわが国の現状に求め、1970年代の銀行破綻においてドイツ連邦監督局の監督責任が大きな社会問題となったドイツにおける法的対応とそれをめぐる判例および学説の動向を分析し、わが国においても現実に生起しうるであろう法律上の問題について検討を加えるものである。本研究は、銀行の経営悪化・破綻時におけるドイツの銀行監督当局の責任問題を対象としており、とりわけ1979年のへルシュタット銀行事件判決および1984年の3次ドイツ信用制度法(わが国の銀行法に相当)改正に関する研究がその中心となっている。そこで、本研究の最終年度にあたる平成21においては、提出済みの「科研費補助金交付申請書/研究実施計画」に従って、銀行法および金融法分野に関する多くの文献・資料を所蔵する(社)東京銀行協会/全国銀行協会附属の銀行図書館を積極的に利用するなどして、本研究に関する国内外の文献・資料の収集、収集した資料・文献の読込みに努めてきた。 現在、具体的な構想を練りながら、研究論文の執筆作業に取り掛かっているところであるが、近年、ドイツでは、監督当局の責任をめぐって従来より問題となっていた免責規定((旧)KWG 6条(3)項、(現)FinDAG 4条(4)項)の憲法適合性に関する初めての判断が連邦通常裁判所によって示されたことや、昨年には世界的な金融危機に端を発した金融規制強化の流れのなかで、預金保険制度の見直しが進められるなど、研究開始当初は想定されなかった不測の事態が相次いで生じた。そのため、平成21年度を最終年度として終える予定であった本研究についても相当な遅れが生じ、未だ本研究成果を公表するには至っていない。 したがって、平成22年10月中を目処に研究論文の執筆作業を終え、その後早急に研究論文を本学紀要に公表する予定である。
|