本年度は、研究テーマに関連するドイツ法の状況を中心に研究を行った。また、わが国で複合的契約関係の法律問題を考える際に、当事者の法的地位との関わりを強く意識するようになった。それは単に「消費者」であるということで安易に保護を認めるのではなく、契約関係に係わる当事者として、消費者としての権利がいかにして実効的なものとなるべきかが、問題点の一つとして浮かび上がることとなった。 ドイツ法の状況を調査するにあたって、消費者保護をめぐる動きが、近年、ますます活発に展開されている点が明らかになった。この点については、消費者契約における情報提供義務や適合性の原則等に関する法規制を調査する際に、それぞれのEU指令の国内法化という作業を通じて、事業者と消費者との間の法律関係について、適切な消費者の保護法理を構築する試みが積極的に行われていることを確認した。また、上記の調査を通じて、懸案となっていた2002年のドイツ債務法改正後のドイツ民法の各条文についても、翻訳という機会を通じて全体像を再確認することができた。 他方、消費者の権利をいかに実効的なものとするべきかという点については、ドイツにおける保険オンブズマンに関する論文を翻訳する機会を得た。そこでは単に手続法上の問題ではなく、実体法をいかにして消費者にとって身近なものたるべきかを改めて考えることができた。本年度の研究実績をふまえて、複合的契約関係における部分的解消法理に関する研究について、具体的な事例を扱うための基礎は出来た。これらの実績を踏まえて次年度の研究に活かしたい。
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