給付不均衡の解消方法の有益なツールとして、フランズ民法固有の概念コース(cause)を中心として研究をおこなった。しかしながら、コーズ概念の有用性が、フランスでも疑問視する声が強く、また、ヨーロッパ統一契約法成立への動きで、このコーズ概念がむしろ足かせとなっていることが判明した。コーズ概念の検討の意義は乏しいと結論づけるのは拙速であるのはもちろんであるが、給付不均衡を解消する概念として、日本の民法にないコーズ概念に固執するのは、効果的な成果はでてこないという結論にいたった。 他方、給付不均衡が生じるのは、契約締結過程だけでなく、契約が成立した後も問題となり得るという結論に達した。具体的には、契約の不当条項が、大きく関連する。研究当初は、契約締結過程におげるルールのみを念頭においていたが、契約内容規制のルールの検討を併せて行う必要があることがわかった。これまでの我が国の議論では、契約締結過程と契約内容、両者は、別の問題であるという認識があるように思うが、両者にまたがるようなルール形成が必要であると、給付不均衡の解消のテーマに取り組む過程において、気づいた点である。 また、解消方法として、日本法でいうところの「不当利得」を中心にして、フランス法の状況をしらべてきたが、不法行為法での問題解消また、物権法で問題解消というように、解消方法が多岐にわたることが判明した。 今後の研究の課題として、現在フランスでは、私的な研究会ではあるが、フランスで、「不法行為改正案」および「物権法改正草案」が出されているので、それらを手がかりとして、フランス不法行為法およびフランス物権法の研究を行い、給付不均衡解消の問題を、多面的角度から継続していく。
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