研究課題
若手研究(B)
最終的な目標は、先端発明を行う者と、改良発明を行う者との間のインセンティヴのバランスを考慮したうえで、選択発明(=利用発明)の特許性及び保護範囲の解釈について具体的な提言をするところにある。インセンティヴのバランスは、化学・バイオ分野の中でもさらに小分野別に区分けした上で、実際の産業バランスを勘案しながら解釈する必要があるだろう。たとえば、製薬産業やバイオ産業のように、新規研究開発に莫大な費用を要する産業では、選択発明を安易に認めると基本発明者のインセンティヴが減退する一方、特許権が乱立することにもなり、第三者の利用が阻害される(上流と下流のアンチ・コモンズ問題)。他方、プラスチックメーカーのようにすでに産業自体が成熟している分野は、小さな改良が他の製品との差別化の決め手となることが少なくない。このような分野ではそもそも画期的な大発明を期待することはできないため、小さな選択発明に特許を付与することが、成果開発のインセンティヴになることが多い。具体的には、以下の小テーマを検討する。まず選択発明の特許性について、(1)新規性、(2)許される補正の範囲、(3)記載要件という3点、保護範囲について、(4)禁反言★、(5)均等論、(6)先使用★、(7)無効の抗弁、(8)従来発明との調整規定★の5点が主たる研究対象となる。これらの論点については、申請者はすでにある程度の成果を公表している(★を付したもの)。また、現在「特許発明の保護範囲に対する補正と訂正の影響」というテーマで論文を検討中である。これら申請人のこれまでの研究は、本申請の小テーマに強く関連するが、他方で、「選択発明と利用発明」に焦点を合わせて行った研究ではない。たとえば、「先願の抗弁」では、基本発明者と改良発明者のインセンティヴのバランスという、本申請の先取り的な知見を示している。これをさらに、発明の分野や具体的な性質によってこのバランスは変化しうる、というところまで検討を進める。すなわち、インセンティヴのバランスという観点からこれら自らの成果を再検討する。
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TEPIA知的財産学術研究助成成果報告書
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