我が国では医療分野における医療者への法的責任追及に対する疑問が提起され、法的責任を追及するのではなく原因究明に着目した事故調査制度の提案がなされる。その一方で、被害救済は訴訟ではない補償のスキームにゆだねるべきとの議論がなされている。 無過失補償制度の創設には、法的責任と原因究明を切り離すことを目的としたものの、すでに開始される産科無過失補償制度においては、原因究明・再発防止の機能をも期待されることとなった。このような制度を運営することは他国に比較して、事例の終結までに時間もコストもかかるものの、原因究明を公的機関が担うべきという我が国の姿勢が垣間見える。このような体制は、今後の補償制度の検討でも引き継がれる可能性があり、専門学会の関与や医療安全に関する専門家集団の活用がより期待されることとなろう。
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