本研究では現代自然保護法の指導理念とは何か、自然保護の為の法的手法はどのようなものであるべきか等々を検討した。特にアメリカにおける野生生物に対する「国家所有権の法理(state ownership doctrine)」あるいは「野生生物信託論(wildlife trust)」と呼ばれる法理論の19 世紀以来の展開を検討した。野生生物が無主物であることはそれを放任するということを意味せず、適切な管理者が適切に管理すべきことが信託的にあるいは所有権的に要請される。本研究の意義として、野生生物管理のみならず、より高次のレベルで国家による自然資源管理あるいは生態系管理の理論的根拠論を抽出することができたことである。
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