昨年に引き続き、資料調査を積極的に行った。貴重な資料を閲覧することが出来たが、占領期の政党、その全ての資料を網羅するにはいたらなかった。 研究最終年でもあるので、成果発表に力を注いだ。本年度は、平成21年度東京大学学術研究成果刊行助成を得ることができた。平成20年9月に博士号を授与された博士論文「戦後保守党における党組織の形成」を改訂し、平成22年2月末に木鐸社から『自由民主党の誕生 総裁公選と組織政党論』として刊行した。同書中では、本研究助成の成果を踏まえて、従来あまり知られていない政党資料をも活用した。参考文献や脚注で資料の所在に言及したことは資料を広く知らしめることに繋がり、多くの研究者が活用するための一助となるであろう。また、平成22年6月刊行予定の『選挙研究』第26巻1号に、本研究助成の成果を踏まえた論文を掲載予定である(平成22年3月時点で脱稿し、提出済)。同号では「特集<政党組織と選挙>」が予定されている。政党組織、とりわけ政党総裁と派閥との関係に注目した論考を編集委員会より求められた。その対象期間は占領期を含みつつ、それ以上に広範な視野を求められる課題であった。政党組織と派閥、さらに総裁のリーダーシップとの関係を考察した論文「保守党における派閥の一考察 1920-60年代」をまとめた。同論文は本研究助成の目的とも合致する内容となった。 占領期の政党、その党組織についてまとめると、GHQの構想との関係が非常に重要である。挫折した政党法の試みのみならず、政党組織、とりわけ党大会や党大会に代わる議員総会の重視といった姿勢が、当該期の政党や政党人に大きな影響を与えたことが判明した。これは保守党か革新政党かを問わない。同時に、保守党の中でも、いわゆる第二保守党系において、革新政党の組織論が強く意識されたことも判明した。 以上、占領期の政党の党組織について、研究を進展させることができたと考える。
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