本研究は、わが国への政策形成プロセスの移転事例を対象に、政策形成プロセスの移転メカニズムを明らかにするとともに、わが国の政策形成に与えるインプリケーションを導出することを主な目的として実施している。具体的には、主に戦略的環境アセスメント(SEA)、参加型テクノロジーアセスメント(pTA)のうちコンセンサス会議、規制影響分析(RIA)について、それらのプロセスの移転過程を事例調査として詳細に追跡し、適応化と文脈修正の実態を捕捉し、分析を加えることとしている。 平成21年度は国内外での聞き取り調査の分析を中心に、追加の聞き取り調査等を実施した。聞き取り調査は、それぞれの政策形成プロセスの導入に携わった人々を対象に、個別聞き取り調査に加えてワークショップ形式で計10名からの聞き取り調査を実施した。海外での聞き取り調査は、研究結果の概要について分析の枠組みと成果発表の道筋について参考とするため、政策移転研究の第一人者でもある英国リバプール大学のデイヴィッド・ドロヴィッツ教授から有益な知見を得た。また、とりまとめにおいては、オランダのデルフト工科大学においてマーティン・デジョン教授を交えた研究会を行い、フィードバックを得た。とりまとめ結果については、報告書を作成するとともに、政策移転に関連する方法論をとりまとめた査読つき論文を執筆した。 本研究の成果としては、政策形成プロセスの移転において、文脈とプロセスの間で相互作用が発生することを明らかにした。RIAとSEAの導入過程の比較により、RIAでは日本の文脈に合わせたプロセスの修正のみが見られるのに対し、SEAでは限定的に文脈側での修正も行われている。また行政主導のRIAおよびSEA導入に対し、pTAでは市民社会セクターによる長期のボトムアップの取り組みを通じ、人材や価値観などの文脈を、修正ではなく形成するという興味深い現象が見られた。
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