平成20年度は本研究課題の初年度に当たったため、主として二つの方向で基礎的な研究を進めた。一つは、政党間関係の分極化に対して公選候補者選定方式が持つ影響について、日米比較を中心とした文献の精査と、部分的な実証分析に基づくワーキングペーパーの執筆を行ってそれをアメリカの学会において報告したことである。この学会報告においては、下院(衆議院)議員選挙において小選挙区制ないしはそれに近似した選挙制度を採用している日本とアメリカであっても、政党間関係の分極化の程度には大きな違いがある理由が探求され、主として政党内部における公認権の所在が、日本では党中央の執行部にあるのに対して、アメリカでは予備選挙の広がりによって地方組織にあることが決定的な差異であることが主張された。また、その知見を踏まえつつ、アメリカ共和党の保守化とそれに伴う政党間関係の分極化、およびその限界についても、複数の学術論文を公表した。もう一つは、とくに日本の政党組織が近年行った諸改革が政党内部組織の集権化・分権化にどのような影響を与えたかを明らかにするための数量データの蓄積である。これは主として、新聞に掲載されている「首相動静」を首相の面会データとして数量化し、その分析作業を通じて面会パターンの変化を明らかにするとともに、そこから政党内部組織の集権化の程度を推測しようとする試みで、部分的な成果は論文として学術誌に公表することができた。この論文においては、竹下・海部・小泉・安倍という4人の首相の就任後12ヶ月の面会パターンの分析から、竹下・海部と小泉・安倍は明らかに異なった傾向を示していること、その差異を生み出しているのが選挙制度改革やいわゆる内閣機能強化といった諸改革であることが論じられた。
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