研究の初年度であることから、今後の基礎となる先行研究の整理を進めつつ、比較の基準としてドイツの事例を設定し、その動向についての分析も開始した。 まず、戦後ドイツにおける大連合政権の歴史的前例として、1960年代半ばに出現したキージンガー政権の形成と運営について分析した。その結果、同政権の形成は、有権者の投票行動や政党システムなどの中長期的な構造変化の影響よりも、短期的な権力政治上の打算に大きく左右されたものであることが確認された。同政権の運営は、政権形成が状況の産物であったことを反映して、喫緊の政策課題の解決に傾斜していた。これらの知見を、高橋進教授との共編著である『政権交代と民主主義』の第2章「ドイツ : ブラント政権の成立」として公刊した。 また、ドイツの二大政党双方に有力なつながりを持ち、大連合政権を社会の側から支えるアクターとなり得るドイツ労働総同盟(DGB)についても研究を進めた。その成果として、ドイツにおける労働組合と政党の関係の歴史的変化に関する論文をKobe University Law Reviewで公刊した。 さらに、近年のドイツで大連合政権を生み出す構造的な要因となっている分割政府状態について研究を進め、その成果を日本政治学会の2008年度研究大会で発表した。 現在のドイツ・メルケル大連合政権の動向に関する資料収集の結果に基づいて、関西政治史研究会で2009年3月に研究報告を行った。そこで受けた指摘をふまえて、現代ドイツの大連合政権に関する論文を準備中である。
|