研究課題
大連合政権の運営については、ドイツ・メルケル大連合政権で政策課題となった年金制度改革と法定最低賃金制度導入問題について分析し、財政均衡重視の姿勢が大連合政権を支える要素となっている一方、いわゆるセーフティーネットの構築をめぐって対立が存在することを確認した。その知見に基づいて、大連合政権下の政策決定過程におけるドイツ労働組合総同盟(DGB)の位置づけについて論じた論文を新川敏光・篠田徹(編)『労働と福祉国家の可能性:労働運動再生の国際比較』所収の1論文として公刊した。それと並んで、日本で大連合政権の形成を求める議論を喚起する要因となった両院での多数派の相違(分割政府)がドイツの立法過程に及ぼす影響についての研究を進めた。その結果、(1)州政府が連邦参議院の構成員となるドイツでは、連邦政府与党と連邦レベルでの野党とが連立する州政府が少なからず存在することから、連邦与党・野党のいずれもが連邦参議院での過半数を掌握できない状態が最も多く見られるパターンとなっており、(2)その下では、連邦与党による連邦野党への働きかけと交渉が立法過程を大きく左右してきた、との知見を得た。その知見に基づいて執筆した論文を日本政治学会の年報に投稿し、査読意見に基づく改稿を経て、掲載された。また、4年間の大連合政権を経て行われたドイツ総選挙の現地調査を行った他、網谷龍介(明治学院大学)・中田瑞穂(名古屋大学)・伊藤武(専修大学)の各氏とオーストリア・チェコ・イタリアの事例について意見交換を行った。その成果を反映した『ヨーロッパ政治ハンドブック』は既に脱稿し、2010年5月に東京大学出版会から刊行される予定である。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
新川敏光・篠田徹(編),『労働と福祉国家の可能性:労働運動再生の国際比較』,ミネルヴァ書房
ページ: 178-196
日本政治学会(編)『年報政治学:民主政治と政党制度』
ページ: 303-321