研究課題
若手研究(B)
(1)本研究の目的は、公的資金の私的目的への流用などの政治腐敗が頻繁に見られるラテンアメリカ諸国において、貧困削減政策の財源が政治的支持動員の道具として利用されることを防ぐための制度改革がどのように進展してきたのか、その政治過程を分析することである。(2)同諸国では、社会支出がポピュリズムやクライアンテリズムに利用される事例が頻繁に見られ、貧困削減という本来の目的が妨げられてきた。しかし、過去20年間に進展した民主化の過程で市民社会が成熟してくると、様々な市民団体は、抗議行動や監視活動を通じて政府の不透明な財源利用に対する統制を強めてゆき、メキシコにおける「社会開発法」の制定等、貧困削減政策における政府の説明責任を強化する制度構築の推進力となった。こうした市民社会の圧力を背景として、メキシコ等の国々では政治的操作の度合いが弱まり、貧困削減政策の民主的統治の成功例として、国内外で高い評価を受けることになった。しかし、この重要な政治変化をもたらした要因およびメカニズムについての体系的な研究は行われていない。(3)本研究では、貧困削減政策の非政治化を導く因果関係のメカニズムを解明するために、市民社会アクターが政府の活動に対して説明責任を求めることを指す、「社会的説明責任(Societal Accountability)」という概念に着目する。メキシコ、チリ、ブラジルの事例の比較分析を行うことによって、「社会的説明責任」と貧困削減政策の非政治化との間に因果関係が存在するのかどうか、検証することを目指す。
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京都大学地域研究統合情報センター・ディスカッション・ペーパー・シリーズ 第16巻
ページ: 31-50
Mexico y la Cuenca del Pacifico vol.11, no.31
ページ: 59-94