本研究では、主に英語圏の近年のリベラリズムの政治理論の動向に踏まえつつ、日本における人権教育のあり方を探究した。近年のリベラリズム理解の下では、人権教育は、日本の文化的資源を踏まえる必要があることをまず示した。すなわち、今後の人権教育は、「自分たちの文化的資源(語彙、思考法、慣習など)を活用しつつ、それを洗練し、自分たちのみならず、自分たちの文化を共有しない外国人や社会的マイノリティを自分たちと同様に尊重することの必要性を訴える議論を作り出すこと」に取り組む必要があると主張した。そのうえで、日本で優勢な人間観や道徳観、ならびに地方自治体の人権啓発活動や学校における人権教育のあり方などを分析し、現代の日本でもっとも受け入れられやすい人権理論や人権教育の手法の提案を行った。
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