研究2年目となった2009年度は、官僚制度の草創期である明治初期の基礎研究を進めた。特に、これまで政治学・行政学の観点から本格的に分析されることのなかった太政官期における官僚の養成、採用、教育、運用について検討を進めた。その上で、明治初期の太政官制から、明治中期の憲法制定と省庁機構の策定、明治後期の政党勢力伸長、大正期の官僚の政党参加、昭和初期の政党政治時代、1930年代以降の官僚政治、そして占領期から戦後の公務員制度、にいたる80年あまりの政官関係を、制度、運用の両面から長いスパンで検討する作業をすすめた。これを2009年9月の政権交代と比較検討する観点から、政治主導の歴史的展開という視角をたて、分析を行った。 この成果はまず「政官関係の歴史的展開-行政国家の誕生と政党政治の創業-」と題して、日本行政学会(2009年5月、於、広島大学)で報告したほか、『WEDGE』での連載「政のかたち官のすがた」としてひろく一般向けの議論としても提示した。現在、明治初期について研究とあわせて、書籍として刊行すべく準備を進めている。 同時に関係者へのオーラル・ヒストリーと原資料の収集も継続して進めている。個人名を挙げることは避けるが、首相経験者、法制局官僚、内務官僚の原資料、人事院、内閣法制局、自治官僚へのオーラル・ヒストリーを実施し、上記研究の基本的資料として用いている。2010年度もこれらの手法をさらに活用しつつ、研究を進めていきたい。
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