研究最終年度となる2010年度は、これまで2年間の研究成果を踏まえて、第一に政党内閣期、とりわけ政権交代時期における政官関係について通史的な研究を進めた。この成果はまず「戦前日本の政官関係-党派化と政党化の視点から-」と題して慶應法学会で報告した。明治初期から政党内閣期までを扱った政官関係論は、これまで行われてこなかった初出のものと考えている。同会での報告は『法学研究』83巻11号に所収された。ついで、『日本行政史』(慶應義塾大学出版会)において「政党内閣期の政治と行政」と題した論考を発表し、政官関係からみた行政史について、桂園時代、大正政変、第一次世界大戦期、戦間期・政党内閣期について分析、検討した。また、日本の官僚育成に尽力した穂積陳重、重遠父子の研究を進める観点から、重遠の嫡子である重行氏にオーラルヒストリーを実施して、両氏についての分析を進めた。 第二に、現代における政官関係との比較検討を進めている。昨年度執筆した『WEDGE』での連載「政のかたち官のすがた」をもとに、現在、単著として刊行できるよう執筆を行っている。目下、この部分に関しては特にオーラルヒストリーを実施、原資料の収集を継続している。この部分については、行政分野の人材育成研究会、国家公務員制度研究会、日台若手研究者交流会など、他分野の研究者、実務家との意見交換を行いながら研究を進めている。今後、この部分の比較研究を進め、より包括的な政官関係研究を行うと共に、現在、準備を進めている多国間での比較研究につなげていきたいと考えている。
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