現在、我が国の多くの自治体では、行政と市民との協働が不可避と認識されている。一方で、民主主義理論においては、市民参加の拡大に対して代議制論者と参加論者の対立にみられるとおり、その政治的効果については否定的な意見と肯定的な意見が出されている。また、近年では、パットナムのソーシャル・キャピタル論や、マッツにみられるように参加民主主義論と熟議民主主義が対立するとの研究も出されている。こうした議論に対する実証研究が日本において少ない状況にある中、本研究は、自治体における市民参加がどのような政治的効果を生み出すのか、言い換えれば民主主義の機能を高めるのか否か、またどのような過程を経てそうした効果が生み出されるのかを、有権者の意識・行動と自治体におけるパフォーマンスレベルの双方から検討し、これらを通じて民主主義理論における議論の対立のほか、参加と民主主義の機能に関する新しい議論に実証的な知見を与えることを目的とするものである。 今年度は、次年度の調査対象となる自治体を選定するため、予算編成過程における市民参加を行っている大阪府池田市総合政策課、複数の地域コミュニティ推進協議会会長の方に対するインタビューと、大規模な市民(約5500名)の参加活動が行われている横浜市明るい選挙推進協議会について横浜市選挙管理委員会と打ち合わせを行った。調査対象者の人数、調査実施環境、調査協力の得やすさなどを考慮し、後者に対する調査を依頼することとした。また、次年度における調査の準備として、政治参加、ソーシャル・キャピタル、熟議民主主義等に関わる文献調査を行い、調査項目を作成し、次年度の調査実施に備えた。
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