市民参加の拡大の政治的効果に関しては、民主主義理論における代議制論者と参加論者の対立にみられるとおり、否定的な意見と肯定的な意見が出されている。また、近年では、パットナムのソーシャル・キャピタル論や、マッツにみられるように参加民主主義論と熟議民主主義が対立するとの研究も出されている。こうした議論に対する実証研究が日本において少ない状況にある中、本研究は、自治体における市民参加がどのような政治的効果を生み出すのか、言い換えれば民主主義の機能を高めるのか否か、またどのような過程を経てそうした効果が生み出されるのかを、有権者の意識・行動と自治体におけるパフォーマンスレベルの双方から検討し、これらを通じて民主主義理論における議論の対立のほか、参加と民主主義の機能に関する新しい議論に実証的な知見を与えることを目的とするものである。 今年度は、大規模な市民参加として「横浜市明るい選挙推進協議会」の活動を取り上げ、推進員・推進委員約5千名を対象とした意識調査を実施した。「横浜市明るい選挙推進協議会」は、選挙管理委員会と協力し、「きれいな選挙」と「積極的な投票参加」のよびかけを行っているボランティア団体である。現在、全18行政区で活動が行われている。調査の回収率は全体で61.7%、18区においても1区を除いてすべて5割を超える結果となった。これらのデータを整えるとともに、活動に参加している人の属性傾向、活動に対する意識傾向、活動の効果に対する主観的認識、政治意識等について次年度の予備分析を行った。これらの結果概要については、2010年1月に行われた横浜市・区明るい選挙推進大会で報告を行うとともに、都筑区選挙フォーラム、鶴見区明るい選挙推進大会において区別の集計結果を含めて報告を行った。
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