本研究のテーマは、戦前昭和期の日本に成立した二大政党制にもとづく議会政治がどのように形成され、運用されたのか、さらに政党システムをめぐってどのような論議がなされたのかを具体的に解明し、近代日本議会史上における二大政党制の課題と評価を検証することにある。本年度は、戦前政党内閣期の政治家・メディア・知識人らの活動や言説を示す史料の調査収集につとめた。調査の対象は主として、政党政治確立後の政界における諸政党の動向を中心に、政党の合同や多数派工作などを通じた二大政党化のメカニズム、政権獲得および元老西園寺の支持をめぐる政治家の動向、貴族院・枢密院・陸海軍などの他機関および内務省・司法省などをはじめとする各省庁との関係、各政党の政策と政治制度改革への対応などである。またメディアや知識人の反応からは、主として二大政党や無産政党に言及する資料などを中心に、多数政党の並立状況への論及、普通選挙法成立前後の論説、「憲政の常道」として定式化されていく政権交代論とその変容、政党党首論、官吏人事をめぐる議論、二大政党制成立前後の論説、初の普通選挙実施前後の論説、選挙制度改革論(選挙革正と比例代表制度の導入をめぐる論議など)、議会制度改革論(貴衆両院の関係、帝国議会常置論など)など、政党システムの構想に関わる議題およびその周辺を重点的に調査した。これらの調査を通じて、上記の問題が二大政党政治の形成・運用・崩壊にどのように関係したかを分析し、研究成果の公表に向けて準備を進めた。
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