本年度は研究計画の最終年度であるため、予定通り研究成果の公表・報告を中心とする活動を行った。本研究課題と同名の報告論文を作成して地域研究統合情報センターの共同研究プロジェクト「中東地域における経済自由化と統治メカニズムの頑健性に関する比較研究」にて報告を行った。また日本国際政治学会研究大会・「理論と方法」分科会において「世論と抑止」に関する研究報告を行った。 これらに関連してイスラエルの外交・占領政策がパレスチナ人からどのように受け止められ、そして彼らの生活・行動をどのように制約しているのか、という観点から行われた「パレスチナ人の政治的認知地図」ならびに「パレスチナ人の越境移動に関する意識と経験」という二つの研究成果を公表した。「政治的認知地図」はWorld Congress for Middle East Studiesという国際学会で報告し、評価を受けた。「越境移動」は地域研究の有力査読誌『アジア経済』に掲載されている。 研究会ならびに学会で報告した論文は欧文学術誌ならびに紀要に投稿中である。このうち紀要に投稿した「中東地域政治システムとイスラエル」は次号の掲載が決定している。この論文は国際システム理論の数理モデルから導出した仮説をイスラエル-イラン関係に照射するものであり、イスラエルによる核施設の先制攻撃が困難であること、およびイランの核開発が成功した時には中東地域の低強度紛争が増大するとの予測を得ている。
|