「研究実施計画」に基づき、本年度において主に次のような活動を行ってきた。資料調査について、今年の重点は現在資料不足にあったアジア地域協力をめぐる日豪関係についての一次資料の補充にあった。まず、日本国内での情報公開請求を平成20年7月から行い、その中で日豪関係についてのものは9月〜10月の間にほぼ開示された。それらの資料を解読した上、平成21年2月中旬から下旬にかけて、キャンベルにあるオーストラリア国立公文書館へ赴き、近年公開されたオーストラリア側の資料の収集に努めた結果、貴重な一次資料が大量に入手できた。他方、米国と英国側の資料については今年度中、主に手元にある資料をスースブックの形にそれぞれ整理・分析を行っており、次年度中の資料調査に備えた。研究成果の報告及び論文・執筆の準備に関しても、本年度中は着実に作業を進めてきた。まず、地域の多国間政治安保協力の再編をめぐる日米関係についての研究を更に深め、その一部の成果を平成20年12月に京都大学の研究会で報告を行い、好評を得た。その際いただいた多くの有益なコメントを参考にしながら、平成21年6月に、ワシントンで開催される米国外交史学会(SHAFR)の年次大会で研究報告を行う予定である。更に、上記の日豪での資料調査から入手した資料の分析作業も目下進んでおり、その成果を踏まえ、平成21年10月に開催される日本国際政治学会の部会で報告を行うことになる。今後、これらの学会報告の原稿に加筆・修正を行ったうえ、学会誌へ投稿し、著書の一部になる予定である。なお、平成20年6月ごろ、投稿を済ませた国連における日英米の活動についての比較研究の論文は国際関係史の分野で国際的な権威のあるInternational History Review誌に採用され、その最終稿を平成21年2月に完成した。掲載は平成21年7月になる。かくして、本年度の研究活動を通じて、当初立てられた計画のすべての内容が実行されており、一部の予定については予想より早く進んだといえる。次年度以降は更に研究のペースを上げ、資料調査、論文執筆(とその準備)及び成果報告の三本柱をめぐって、バランスよく、且つ着実に先へ進めようと考えている。
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