本年度は前年度の研究成果に踏まえ、まず、資料研究に関し、6月末から米国のフォード大統領図書館、第二国立公文書館及びカーター大統領図書館において、1970年代後半の日米安保関係についての最新資料を大量に発掘し、今までの研究を時代的に更に掘り下げる契機を作ることができた。そして、7月下旬に、豪州国立公文書館(キャンベラ)とそのシドニー分館にて3度目の資料調査を行ない、75年以降の日豪関係についての資料群を発見した意味で、調査の目的がほぼ達成したといえる。次に、本年度中、国内外の学会及び研究会における成果報告を積極的に行なってきた。前年度までまとめた70年代後半の日米関係についての論文原稿に6月の米国資料調査の成果を加味する形で、7月中旬、シドニー大学において、同大歴史学部及び日本研究学部共催の特別講義でその内容に関する報告を行ない、大きな反響を得た。その後、同大歴史学部とハーバード大学などが共催したワークショップにも参加し、関係テーマに関する新たなヒントが多く得られた。更に、10月末、札幌で開催された日本国際政治学会の年次大会においても本プロジェクトをめぐる意見交換を行ない、共同研究の目途も立った。12月初頭、ケンブリッジ大主催のワークショップに出席し、東アジア冷戦史の文脈における日本の位置づけをめぐる認識をまとめた報告を行なった。最後に、研究論文の執筆に関し、今年度9月以降、日豪関係についての論文の準備を進め、2月に最終稿を脱稿した。本稿を収録する共著は佐藤晋氏(二松学舎大学教授)、宮城大蔵氏(上智大学准教授)と共同編集する形で平成23年度内に慶応義塾大学出版会より公刊される運びとなっている。それとは別に、70年代の日本の大国化とアジア太平洋地域の国際関係の変容に関する単著の構想もほぼ完成しており、23年度の早い時期から執筆に移す予定である。また、英文で執筆する70年代後半の日米関係についての論文の執筆も順調に進んでおり、23年度前半に国際ジャーナルへ投稿する見込みとなっている。
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