研究概要 |
19世紀半ば以降、蒸気船の定期航路の発達や、海底電信網の整備などのテクノロジーの進歩により移動する人・モノ・カネ・情報の量は増大し、アジアにおいてアヘンの密輸や海賊の横行、コレラやペストに代表される伝染病の伝播、国境を越えて広がる宗教運動や革命運動などといった問題にいかに有効に対処するのかが、国家や植民地、地域において解決すべき大きな課題となった。こういった課題に対して、国家や植民地は一体どのように対処しようとしたのであろうか。本研究は1920年代、30年代のアジアにおいて、イギリス、そしてその自治領であるオーストラリア、日本、アメリカ、中華民国が、自らの安全を脅かす政治的な革命運動に対して、(1) どのような情報をどのような政治情報機関をつかってどのように収集し、その情報を旅券管理制度や警察等による取締りに活用したのか、(2) これらの植民地や国家の間で、情報の共有や取締りをめぐってどの程度の協力関係が存在していたのかを、1919年にモスクワで設立された第3インターナショナル、通称コミンテルン(Comintern)によって主導された国際共産主義運動を対象に明らかにすることを目的とする。本年度はイギリス国立公文書館での資料調査を実施した。加えて、2009年9月にオックスフォード大学で開催された国際ワークショップ`Identifying the Person : Past, Present, and Future"でこれまでの調査に基づいて、"Identifying`Agents'in Asia : The Political Intelligence Services, the Passport Control System, and the Communist Intemational in Asia in the 1920s and 1930s"と題する報告をおこなった。
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